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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)10462号 判決 1959年6月20日

原告 中川鉱油株式会社

右代表者 中川七蔵

右代理人弁護士 佐藤久四郎

被告 東北急行運送株式会社

右代表者 岡部岩雄

右代理人弁護士 進藤誉造

進藤寿郎

日野勲

主文

被告は原告に対し、金一九七、一七五円及びこれに対する昭和三四年一月二四日から支払ずみまで年六分の割合による金員の支払をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

此の判決は仮に執行することができる。

被告において金一〇万円を担保に供するときは前項の仮執行を免れることができる。

事実

≪省略≫

理由

原告及び被告が夫々商人であることについては当事者間に争がない。

甲第一号証の一ないし五二、甲第二号証の一ないし九、甲第三号証、証人広保総太郎同山中富三、同渡辺正男の証言を綜合すれば次の事実が認められる。

訴外広保総太郎を被告会社福島営業所の代理人として原告と被告会社福島営業所との間に原告主張のとおりの内容を有する給油契約が成立したこと、その結果右広保が予め原告から注文伝票用紙を預つておき、被告会社福島営業所の自動車が上京の都度各自動車の運転手は当該自動車の鉱油の所要量を右広保に申告し、同人又は同人不在の場合はその同室に勤務していた訴外山中富三が鉱油の種類、数量、年月日、車輛番号を記入の上捺印した伝票を受けとつた運転手はその帰路につくに先立つて原告会社営業所において右伝票と引き替えに所要の油の補給を受けていたこと、そしてその代金は毎月二六日から翌月二五日までの分の請求書を原告から右広保に提出し右広保はこれを被告会社福島営業所に送付すると当時被告会社福島営業所の所長であつた訴外平間惣次が集金等のため上京の都度広保にその代金相当額を交付し同人を通じてこれを原告会社に支払つていたこと、昭和三二年九月二六日から同年一〇月三一日までにも右の方式によつて原告会社が被告会社福島営業所所属の四台の貨物自動車に対し原告主張の代金額相当量の給油をしたが同年一一月一日以降は被告福島営業所の都合で原告との取引を取止めるに至つたことが認められる。そして証人小泉義幸の証言によれば訴外平間惣次は被告会社から給与を受け業務の執行について被告会社本社の指揮を受ける反面被告会社福島営業所の所長として被告会社の名において同営業所の経営に関する一切の行為をする権限を付与されていた事実が認められる。右の事実によれば被告会社福島営業所長がその名において原告会社と締結した本件継続的給油契約の効力は営業主である被告会社に及び、被告は右契約から生じた本件鉱油売買代金債務を支払う義務を負うものというべきである。

被告は被告会社福島営業所は独立採算制を採用していたから被告会社は本件契約から生ずる債務を負担しない旨を抗弁の事由とするけれども、右営業所が独立採算制を採用していたか否かは被告会社の内部の経営政策上の問題にすぎず、たとえ独立採算制であつたとしても被告はその代理人たる福島営業所長の権限内の法律行為によつて生じた債務につき、責任を免れることはできないというべく、しかも証人渡辺正男の証言によれば、原告は福島営業所が独立採算制であることを了承しこのことについて特別の了解があつたとは認められないので、被告の右抗弁は採用できない。

又被告は原告主張の期間中の給油取引は貨物自動車運転手と原告会社の通謀にもとづく虚偽のものであるから無効である旨抗弁するけれども、これを認むべき証拠がない。又原告の本訴請求の提起について事前に裁判外で被告に対し催告又は交渉しないとしても別段信義則違背ということはできず、又被告会社福島営業所との取引から生ずる債権を被告会社に対して行使することは債権本来の目的達成のためであつて被告会社を害することを目的とする訳ではないから権利の濫用ということはできず、この点に関する被告の抗弁は理由がない。又本件訴状が被告に送達された日の翌日が昭和三四年一月二四日であることは記録によつて明らかである。

よつて、原告の請求は正当であるから認容することとし、訴訟費用について民事訴訟法第八九条を仮執行の宣言について同法第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 三渕嘉子)

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